中学校

抜粋

8.映 画

 純語学指導用の映画はわが国ではまだあまり知られていないが,イギリスでは語学の実地指導用の映画が正しい語学指導の原理に基いていろいろ企画され実験もされ製作もされている。経済的や技術的な事情から,語学指導用の映画が一般に実用になるのは,わが国においては時間がかかるかもしれない。

 英語国民の国土・生活・業績などについて生徒を指導するのには,映画は有力な教材源である。いろいろなできごとや施設などを写実したいわゆる「ドキュメンタリー・フィルム」(記録映画)は特にしかりである。一方商業映画に関しては,それが実際とは違うということ,実際を描こうとしているのではないということを生徒に指摘したい。商業映画はもともと娯楽用として製作されているのであって,物語を展開しているのであるが,その物語には虚飾がほどこされている。そこで商業映画が正しい外国の姿を映しているものと思うと,外国についてとんだ誤解をすることになる。たとえば,西洋人は探てい映画や推理映画を好むが,このような映画の筋はほとんどいつも仮空のものであって,これを外人が額面どおりに受け取るため,犯罪が非常に多いような印象を与えてしまう場合もある。

 英語用として,特に上級用として,適当な映画類ができている。有名な劇・小説・短編などを映画化したものがそれである。英国で製作されたシェークスピアもの二つ「ヘンリー五世」と「ハムレット」はこの部類に属している。また,アメリカにおける新しい劇やりっぱな小説がいろいろ映画化されている。必ずしも上級の生徒でなくとも,英語国民の話す英語のことばの流れやリズムに耳を傾けるだけでもうるところがあるであろう。

 娯楽映画や語学指導用映画のほかに,アメリカでは,教育映画がどしどし製作されていて,理科・社会・図画工作・音楽・その他各科に用いられており,現在では何千という教育映画が利用できるようになっている。娯楽映画と違って,できるだけ事実に則することとともに歴史・経済・政治上のできごとを生徒に理解させることを眼目としている。この種の教育映画もわが国では現在一般には手にはいらないが,やがて利用しうる日の来ることを考えておかなければならない。

 

9.幻燈とフイルム

 普通の絵は一度に一人しか見られないのがおもな欠点であるが,この欠点は幻燈板を用いれば是正できる。わが国においてもかなりな題材にわたって利用できるようになっている。説明は英語ではないが,全部の生徒で見ることができるから,教師または上級では,生徒1人か2人で英語の説明を加えていくようにすればよい。実物や模型と同じような扱いもできる。また,教師も生徒も写真や絵から幻燈板を作ることもできるし,すでに学んだ物語を筋を追って展開して見ることも一つである。

 

10.投光器

 投光器は幻燈器をかねているものが多いが,これを用いれば不透明な写真映画ならばなんでもスクリーンに投影することができるから,教師も生徒も,雑誌や新聞から写真・絵画・地図・図表などを切り抜いて置いて,これをスクリーンに楽に写してみなで研究することができる。また,切り抜かないでも本のあるページまたはページのある箇所を投影することができ,利用のしかたは無限といってよい。