『イエロー・フェイス―ハリウッド映画にみるアジア人の肖像』村上 由見子著

この本は、幾通りにも楽しめる。
一つは、単にアメリカにあるアジアへの特に日本への偏見の歴史を読んで笑うこと。
まぁ、どこの国にだってステレオタイプの偏見というのはあるのであって、どこでも同じ、日本とて例外ではないというのを見る鏡にもなるのだけれども。
また一つは、日本にもファンの多い、あの有名なハリウッドの映画人たちがやってきた行為としての「へぇ」の連続。マーロン・ブランドはまだましな日本人を演じたようだ。
また一つは、アジア系アメリカ人と特に俳優の受難。村上 由見子さんはアジア系アメリカ人についての著書がいくつか他にもあるし、そういうところも本書に現れている。
また一つとして、特に戦時における民主主義国家の国策のプロパガンダの作られ方。民主主義という点において、細かいことを抜きにすれば、少なくとも相対的には概ね世界の最先端であろうアメリカですらそうなのだと。
しかし、また一つ、国策がどうあろうとも、国民が望むステレオタイプを再生産する国民の欲求。これはある意味「メディアの力」でもあるけれども、鶏と卵、メディアを責めても解決しない。日本も、韓国も台湾も例外なく、その時の政治・経済・文化の状況に応じて「求められるステレオタイプ」の力が働く。人間はもちろん、すべてのことにステレオタイプを超えて理解することなんかできないが、その限界とどのようにしてつきあうのかを課題とすることは、社会としても個人としても十分可能なのだと信じたい。
1993/02の発行になっているが、さてこの10年の最新の状況はやはり気になるところ。