『東アジア文学空間の創造』崔 元植著、青柳 優子訳

これは非常に読み応えがある。東アジアの、とタイトルについてはいるが、あくまで韓国文学者の論文集。特定の原著があるわけではなく、原著者の各種論文を取りまとめたもの。書名通りの東アジア文学空間についてももちろん言及はあって、韓国からのその提言に対してあとがきで日本人がコメントを寄せてはいる。が、韓国人からみた歴史観や、韓国文学論が中心。翻訳者は『懐かしの庭』の訳者で、訳者が論文を選んで編纂した本のようなので、訳者のカラーが非常に良く出ている。もちろん、『懐かしの庭』に関する崔 元植による詳しい分析やその他文学(小説、詩等)も多数あり、20世紀の朝鮮・韓国の文学に興味のあるものなら是非読んでおきたい作品に仕上がっている。文句なしの良書。