『偽りの民主主義 GHQ・映画・歌舞伎の戦後秘史』浜野 保樹著

スリリングなジャーナリズム。関係者の発言を鵜呑みにすることなく、各種一次資料を慎重につきあわせて、綿密な調査の上で、戦後の映画・歌舞伎や、TVや大衆音楽などの歴史をアメリカとの関係でみていく。
戦後、海外をアメリカ映画市場として開拓しようとしていたが、一方で日本に限らず支払いのための基軸通貨=外貨=ドルの不足で結局アメリカ映画がヒットしてもドルは持ち出せず、合作映画を海外で撮ってそのフィルムを資産として持ち帰るという戦略になるといった側面が映画史にどういう影響を及ぼしたのか等々面白い視点もある(今映画のドルがアメリカに集まるのは、その分のドルが別のルートで海外に出ている裏返しということ)。
話の中で一番スリリングなのはGHQの戦略と映画人の戦い。
東南アジア映画祭やアジア、アフリカ映画祭の発足にも言及していてまたなかなか面白い。是非読んでおきたい。