『朝鮮近代文学とナショナリズム――「抵抗のナショナリズム」批判』李 建志著

韓国籍の在日研究家の手による書。2007年刊。これは、よい。著者自身の立場は、わかりやすい名前を挙げれば鄭 大均などに近いだろうか。朝鮮系「抵抗のナショナリズム」を批判しつつ、単に今時の「わかりやすい保守」でもない。
在日の問題も扱いながら、本書の冒頭はアイヌ、沖縄に言及しつつ始まるが、沖縄には「先住民」として欧州血統の人が住む島もあるという事実等々。本書は各所に発表された論文を集めたモノなので著者の立場自体は一貫しているが扱っているテーマは広い。勿論近代朝鮮文学にも詳しく触れられている。終わりの方には在韓華僑と仁川にも触れていて、映画『北京飯店』と『子猫をお願い』についての評論も出てくる。本書は非常に貴重。
ナショナリズムといったものに関心のある層なら是非読んでおきたい。