『日韓アニメーションの心理分析―出会い・交わり・閉じこもり (ビジュアル文化シリーズ)』横田 正夫著

著者は大学で映像を学び、その後医学の分野に進み統合失調症に詳しく、日本アニメーション学会会長という。まさにそんな経歴の人の本だ。
相当おおざっぱに言えば、日本のアニメは引きこもり的、韓国のアニメは自分をテーマにしても他者との交わりがある、と。まぁ総論で言えばそんなに異論のあるところではないといえばないのだが、日本アニメを『時をかける少女』や『エヴァンゲリオン』で代表し、細川晋、山村浩二川本喜八郎を紹介し、韓国のアニメをチャン・ヒョンユン、ヨン・サンホ、パク・チヨンで代表するというセレクションはどうなのか。なぜこれらなのか。そして、なぜ「アニメ」であって小説や実写作品や漫画はテーマではないのか(『ブレイブ・ストーリー』に関するくだりでは一部原作小説も分析の対象としているが)。そして同じアニメといっても時代の変遷もあるだろうがその辺の時代感もよくわからないなど、どうも釈然としない点が残る。
それでも、韓国のアニメ作家にインタビューしながらアニメの専門家の立場で語った日本語の資料がそう多くないことなどを考えると、今のところ貴重な書籍であるとは言えるかと。是非買って一読していただきたい。