『ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争 上』ディヴィッド・ハルバースタム著、山田 耕介, 山田 侑平訳

ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争 下』ディヴィッド・ハルバースタム著、山田 耕介, 山田 侑平訳
戦史ものでもあり、当時の戦況や政治状況に詳しい人は今更読む必要はないかもしれない。が、実にしっかりしている。ソ連崩壊後の情報公開等で旧東側の動きが明らかになった成果も取り入れているが、やはり中心はアメリカに偏っているのは否めない(アメリカの情報公開も反映している)。
しかし、軍事面、政治面を丹念に追いつつ、現場の兵士の声、そして第二次大戦から国共内戦、と冷戦の始まり、朝鮮戦争ベトナム戦争と流れる20世紀中盤の歴史を朝鮮戦争と米国を中心に俯瞰する一貫した姿勢が非常に読み応えがある。政治面でも軍事面でも。中国もアメリカもこれで痛い目にあったからこそ、その後東西全面衝突はそれほど起きなかったのではと言っても過言ではない。ベトナム戦争にしても、アメリカは失敗したが、中国は介入において今ではメジャーな非正規戦(ルーツはもちろん朝鮮戦争以前だが)に移行していく。そのターニングポイントとなった戦場。第二次大戦後最大級の死傷者を出した大戦争。それがいかに非合理に、行われ、双方失敗の繰り返しで行われてしまったのか。戦争の遂行は合理的にやるべきだが、実際の戦争はそんなにうまくいくわけがない好例でありすぎる。
まぁ、マッカーサーへの強い批判など視点の偏りは多数あるが、それでも本書の力はかげるところはない。