『七五調のアジア―音数律からみる日本短歌とアジアの歌』岡部 隆志, 西條 勉, 工藤 隆著

中国周辺の少数民族にも多く見られる七五調(?)。日本の七五調と結びつけて東アジアの七五調を見る。野心的と言っていい気はする。しかし。日本の其れは今迄の研究を元に、何故六や八ではなく七五調が合うのかについて踏み込んでいるのにもかかわらず、中国のそれへの踏み込みが甘い上に、音韻の違う日本と古典中国漢詩のそれとが何故類似しているのかも踏み込み切れているとは言い難い。や、専門的に踏み込んだ記述も少なくないので私が読み取り切れてない部分がある可能性はあるがそれにしても、古典漢詩については書かなくても前提なのか。朝鮮詩についても触れているが、朝鮮語の音韻についての解説は非常に薄く、本書を読んでその関連を読み解くのは単体では難しいのでは(ハングルに振られた仮名ルビは品質が低かったし。ハングル読めなければその朝鮮語の音韻の特徴が読み取れる文章にもなっていなかった)。それでもアイヌ琉球等にも踏み込んでいて、またモーラ、音の切り口や音楽的切り口の言及もあって読む価値がないというほどではなかろうかと。