『マルチリンガル教育への招待―言語資源としての外国人・日本人年少者』中島 和子著

これもまたとても面白かった。帰国子女的なバイリンガル教育、移民その他の言語マイノリティへのマルチリンガル教育。この手のマルチリンガル教育は失敗すればどっちの言語も身につかないリスクがある。対処しようとするとコストがかかることから「そのコストを社会的に負担することのメリットはあるのか」とも批判されがちである。研究に途上の点もあって何でも断言できるわけではないが、マルチリンガル教育のメリットに関する論文を多数引用しつつ(日本の事例や海外の論文等)、今の日本でもっとやれることへの提案が多数含まれている。これは、もちろん、一般的日本語母語の日本在住日本人への外国語教育にも関係する話題でもある。言語マイノリティのバイリンガル教育への投資は社会的にメリットがあるという指摘もある。言語教育や多文化共生に関係する人にはぜひ読んでほしい一冊。本書では日系人の日本移民の統合問題や帰国子女、民族的マイノリティ等の事例をいろいろ触れている。